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がね@心理系職員

臨床心理士
売買専門の臨床心理士です。たまに雑学的に臨床心理学関連のことを書きます。
※個別の相談等は受けかねます。

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がね@心理系職員

【いじめの件数のお話・続】

前回投稿の続きです。

前回、平成23年度から平成24年度にかけていじめの件数が約7万件から約20万件に急増している、と書きました。
正確にはいじめの件数ではなくいじめの認知件数になりますが、この急増の背景には平成23年に起こった大津市中二いじめ自殺事件の影響があります。

※大津市中二いじめ自殺事件(wikipediaより)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%B4%A5%E5%B8%82%E4%B8%AD2%E3%81%84%E3%81%98%E3%82%81%E8%87%AA%E6%AE%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6 

この事件をきっかけに、それまでいじめられていたけれど声を挙げられなかった子供やその保護者、または今まではいじめとされていなかったような些細な行き違いもいじめとして数えられるようになりました。

つまりこの急増は、いじめの数が増えた、というよりも隠されていたいじめが表面化した、という表現を用いるほうが正しいと思われます。

そして、平成25年にはいじめ防止対策推進法が成立しました。
この法律にはいじめは次のように定義されています。

「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校(小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校)に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」

キーワードは「心理的または物理的な影響」で「児童生徒本人が心身の苦痛を感じている」という部分ですね。わかりやすく言うと、本人がいじめと言ったらいじめになる、ということになります。
つまり仲間外れにされた、暴力を振るわれたというものから、喧嘩をした二人のうち一人がいじめと主張した、本人が陰口をたたかれた気がする、という真偽が分からないものまでいじめとしてはカウントされ得るということですね。
なので調査があったとしても実態を把握することは難しく(最近ではSNSでのいじめもあり、より実態の把握が難しくなってます)、同じいじめという分類でもどこまで介入が必要かどうかは個別のケースによります。

ということでいじめの件数に限った話ではないですが、あくまで数字は数字であり、(数字が何を表しているかを知っておくことは必要だけれども)合わせて実態を考えていかなければいけないこともまた、忘れてはいけないことですね。


「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00400304&kikan=00400&tstat=000001112655&result_page=1&second=1 

がね@心理系職員

【いじめの件数のお話】
皆様こんばんは。

突然ですが皆さんは「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」って知っていますか?

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00400304&kikan=00400&tstat=000001112655&result_page=1&second=1 

この調査は毎年文部科学省が小・中・高校に向けてとっている統計なんですが、いじめの認知件数の推移をみてみると、平成23年度から平成24年度にかけて件数が約7万件から約20万件に急増しています。
一年でいじめの件数が3倍近くまで跳ね上がっており、通常の調査では考えられないよう数字ですね。これは一体なぜでしょうか?

次回その理由を踏まえていじめというものについて考えていきたいと思います。

がね@心理系職員

【9.まとめ】

計8回発達障害に関しての記事を投稿しました。小難しい説明を長々と投稿してきましたが、皆さんお付き合いありがとうございました。まだまだ分かっていないことが多く、現場にいても困難を感じることばかりですが、発達障害とそれにまつわる支援について少しでも共有できたなら幸いです。

投稿した記事については一応ここにまとめておきますので、まだ読んでいなくて興味がある人はぜひご一読ください。

【1.発達障害とは?】
https://valu.is/users/feed/2650303

【2.自閉スペクトラム症とは?】
https://valu.is/users/feed/2651267

【3.自閉スペクトラム症への支援】
https://valu.is/users/feed/2651985

【4.注意欠陥多動性障害とは?】
https://valu.is/users/feed/2652792

【5.注意欠陥多動性障害への支援】
https://valu.is/users/feed/2653346

【6.学習障害とは?】
https://valu.is/users/feed/2656663

【7.発達障害に関する法律】
https://valu.is/users/feed/2657619

【8.発達障害児への取り組み】
https://valu.is/users/feed/2660376

がね@心理系職員 on VALU

先日TwitterでVALUの投稿で見たい内容についてアンケートをとった結果、発達障害についてが多かったので、数回にわたって発達障害についてまとめていきます。 【1.発達障害とは?】 一口...

VALU
がね@心理系職員

【8.発達障害児への取り組み】

今回は発達障害児への取り組みについて紹介していきます。

皆さんは療育という言葉はご存知でしょうか?この言葉は治療と教育とを組み合わせた言葉です。主に発達障害をもった子供の発達を促し社会的な自立を目指す取り組みのことを指します。(発達支援と言い換えても大丈夫です。)
実際何をするかは個々の特性に合わせてプログラムが組まれることになりますが、例えば発達障害児の中には自分の体の運かし方の感覚が上手に入力されないために、箸が上手に使えなかったり靴紐が結べなかったりする子がいます。そういった子には体を動かすゲームや作業を通して体を動かす感覚を養わせていきます。
感覚過敏がある子、言葉の発達が遅い子、対人関係が上手に結べない子、それぞれに合わせて早期から介入することで苦手な部分をカバーし、得意な部分を伸ばしていきます。

義務教育に入ると今度は特別支援学級、通級教室、特別支援教室、通常級と様々な選択肢が現れます。
自治体によって異なりますが、大体は就学相談で心理検査や行動観察、保護者との面談を経てどの通学形態が良いか検討され、最終的には保護者の判断によって決められます。
一つ一つ説明したいところですが、長くなってしまうので近年設置が増えている特別支援教室と通常級での支援について説明します。
特別支援教室は、いわゆる発達障害をもった子供が支援を受けられる教室です。特別支援教室ができたことで今までは他校に行って支援を受けていたもの(これがいわゆる通級です)が、今度は普段通っている学校で支援を受けられるようになりました。週に一回~数回ほど、通常の授業とは別に取り出しで少人数で必要と思われる授業を行います(ソーシャルスキルトレーニングなど特別なプログラムを行う場合もあります)。
今までとの違いは同じ学校内に教室があることで児童の負担が減り、学校内でも連携がとりやすくなる点にあります。一方で特別支援に精通した教師が各学校に必要になるため、そのための人員の配置が課題になっています。また上限の人数も決まっていて中々希望しても入れない学校も多いです。

その場合通常級で支援を受けながら通学することになるのですが、ここでも多様な取り組みがあります。前回書いたように障害者には必要に応じて「合理的配慮」をしなければならず、それは学校でも同じです。
じゃあどんなものがあるかというと、パニックになりやすい子のために教室の中にクールダウンのスペースを設けたり、行動の見通しがたちにくい子にはスケジュールをカードで視覚化したものを用意したり、注意が逸れやすい子には外が見えない(動くものが視界に入りにくい)席を用意したり、など様々な工夫があります。
ちなみに視覚支援はよく用いられる方法で、視覚シンボルを扱ったこんなHPもあります。
http://droplet.ddo.jp/drops/

しかし、実際は担任一人では通常の学級運営に加えてこれらの支援をすべて行うことは難しく、支援員や巡回相談員が入りつつ何とか支援を行えている現状もあります。


では次回で今までの投稿を簡単にまとめて発達障害についての投稿は締めたいと思います。

がね@心理系職員

【7.発達障害に関する法律】

今回は発達障害に関する法律について説明していきます。
まず発達障害者支援の基本となるのが2005年に施行された「発達障害者支援法」です。

この法律では発達障害者を
「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害者、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその障害が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」(第2条)
としています。

基本的にこの定義に沿って日本の発達障害者支援は行われていると言っていいでしょう。(余談ですがこの法律が成立した時期はまだ精神科の診断上はADHDは発達障害ではなく行動の障害に分類されていました。実は日本の法律は先取りしていたんですね。)


もう一つ重要な法律があります。
それは2016年に施行された「障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」です。
その名前の通り障害による差別をなくすことを目的とした法律ですが、ここで重要なキーワードが一つ登場します。それは「合理的配慮」です。

これは発達障害に限らず障害者一人ひとりが健常者と同じようにサービスを享受できるように過度な負担にならない範囲で必要な便宜を図ることです。

一つ例を挙げましょう。
ある学習障害をもった生徒がどうしても黒板の文字を書き写せず勉強に困っていました。授業の内容自体は理解はできるものの、ノートで復習ができず他の生徒と比べ学習に遅れが出ており、保護者は学校に障害をもった子への合理的配慮を求め、次のように提案しました。
・カメラやスマートフォンによる黒板の撮影の許可
・書字が少なくて済むようなプリントの用意
保護者や生徒と学校で話し合った結果、両者の負担の少なくて済む黒板の撮影を許可することにしましたが、生徒自身のスマホを授業中に使うことは校則に反するため学校の備品のカメラを使い校内でプリントアウトする条件をつけました。このような配慮によって書字によるハンデが減った生徒は学習に前向きに取り組むことができました。

これはあくまで一例です。実際は障害の種類や周囲の環境によって合理的配慮の内容は変化していきます。もちろん保護者からの提案がなくても学校が率先して動くこともあります。
ただ一つ忘れてはならないのは、なにがなんでも配慮しなければならないのではなく、あくまで過度な負担にならない範囲での配慮が「合理的配慮」であり、障碍者を優遇するのではなく健常者と同じようにサービスを享受できるようにすることが目的であるということです。



それでは次回は、実際に発達障害児にはどのような取り組みがされているかを書いてみようと思います。

がね@心理系職員

【6.学習障害とは?】

発達障害の中でも学習障害は一般的には知られていないものだと思います。

まずどういうものか、文部科学省の定義を引っ張ってきましょう

「学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因と指定、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない」

……長いですね。次に心理でよく使われる定義を引っ張ってきます。

「知的な遅れがなく、視覚や聴覚、運動能力にも問題がなく、本人の努力や生育環境や教育環境にも関わらず、ある限定的な能力の障害によって期待される学力が身についていない状態」

……まだ長いですね。

なのでさらに簡潔に言うと、他に問題がないのに学習が身につかない状態、のことです。

例えば、弱視であれば文字を読むことに困難があることは了解可能ですし、家庭の問題で学校に通えていないのなら勉強に遅れが出てくるのは当たり前です。そうした要因がなく学習の特定の領域で遅れが出ている場合に学習障害が疑われます。
(全般的に遅れているのなら知的障害が疑われます。)


学習障害の中の状態像も様々です。代表的なものを次に挙げていきます
・読字障害…文字一つ一つは読めるがまとまった単語や文章として読めない。読み間違いや飛ばし読みが頻繁にみられる、など。
・書字障害…綴りや似ている文字との間違い(「め」と「ぬ」)。鏡文字になってしまう、文字の形が崩れてしまう、など。
・計算障害…数の概念が理解できない、10の分解合成ができない、位が理解できない、など。

厄介なのは他の発達障害との合併も多くあることです。特にADHDとの合併率は高く(40%以上とも言われています)ADHDの多動傾向で授業に集中できず成績が落ちていたと思いきや、その裏に読字の困難さが隠れていた、ということも考えられます。現場では常に複数の要因について考えを巡らせなければなりません。


支援方法について基本的には学習の指導が中心になります。もちろん通常の指導では困難さを感じるだけですので、一人ひとりの特性を把握したうえで一つ一つできる範囲を増やしていきます。また、できない部分は利用できるものでカバーすることも大切です。例えば読字に問題がなく書字障害がある人はタブレットを利用すれば、字を書くことはできなくても文章を綴ることはでき、自身の能力をカバーできます。そういう意味でもICT教育の発展は期待されますね。


では次回は発達障害に関する法律について書きます

がね@心理系職員

【5.注意欠陥多動性障害への支援】

注意欠陥多動性障害(以下ADHD)への支援においても、自閉スペクトラム症(以下ASD)と同じく本人に働きかけるものと環境に働きかけるものがあります。
※ここでいう環境とはモノや空間などの物理的な環境のみではなく、保護者や友人、教師や上司のような人間関係を含めた精神的な環境も含みます。

また、これはADHDに限らず発達障害全般に言えることですが、支援において働きかける問題は重層的になっています。ADHDの場合はまずその中核的な症状(不注意や多動・衝動性)、その症状による生活場面での生きづらさや困り感もしくは自己肯定感の低下、さらにそこから二次障害として抑うつや不安などの症状が出ることがあります。このそれぞれに別々の対応が必要になります。


ADHDの中核症状についてはコンサータやストラテラといった薬が用いられます。しかしADHDの治療ガイドラインでは基本的には薬物療法のみではなく、他の支援方法を組み合わせることが前提になっています。また、二次障害に対してはASDと同じく薬物療法や心理療法を用います。しかしながらその場合も元々のADHDの特性に対しての支援はもちろん必要です。

では、薬物療法以外でどんな方法が用いられるのでしょうか?主なものに、

SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)、親(職場)への情報提供、プレイセラピー、行動療法、所属する機関との連携及び環境調整、ペアレント・トレーニング

などがあります。今回はこの中からペアレント・トレーニングと環境調整の方法について取り上げて説明していきます。

ペアレント・トレーニングは応用行動分析という考え方に基づいて親にADHDの子供へのかかわり方について改善を促していくプログラムです。好ましい行動を増やし、好ましくない行動を減らすことを目的にしてそのために親は子供にどうやって関わっていったら良いのか、講義やロールプレイを通して理解を深めていきます。(中でも特によく用いられるのはトークン法と呼ばれるものですが、ここでは長くなるので割愛させていただきます)
多くはグループで複数の保護者を交えて行うので効果としては
保護者が①子供へのかかわり方を知る②子供への理解を深める
といった本来の機能のほかにも
③同じADHDの子の子育て仲間ができる④子供の支援を他の人にも広げられる、
といった副次的な効果も期待できます。


次に環境調整です。環境調整に関してはこれといった一つの方法があるのではなく、ADHDの人それぞれに合った方法をその場に応じ考えていかなければいけません。
例えば不注意が強くスケジュール管理が難しければ一定時間ごとにアラームで区切りの時間を知らせるようにする、多動が収まらない子供がいれば教室内に動いてもいいスペースを設ける、といったように対処の方法は、本人の特性、学校/職場の自由度、周囲の人間関係など無数にある要因の中から最適なものを探っていくことになります。
(発達障害児・者へのこういった調整は「特別扱い」ではなく「合理的配慮」と言えます。このことについてはまた後の投稿で言及します。)

また、例えば多動も言い換えれば、エネルギーがある、とも言えます。もちろんそれが原因で問題が起きるようであれば抑えなければいけませんが、その人に合った環境を用意することで力が発揮できるようになれば、その特性もプラスに向くことになります。
支援方法についていくつか書いてきましたが、大切なのはADHDの症状をなくそうとするのではなく、生活上での困難を減らし、本人がその特性を自分らしさとして受け入れられるようになることです。


それでは次回は学習障害について書いていきます。

がね@心理系職員

【4.注意欠陥多動性障害とは?】

今回は注意欠陥多動性障害(以下ADHD)について説明していきます。

ADHDは自閉スペクトラム症(以下ASD)に比べると最近になって知られるようなりましたが、ASDの有病率が1~3%なのに対しADHDの有病率は3~7%程度であり、発達障害の中でも特に数が多いグループといえます。

ではADHDとは何か?ですが、大きく二つの症状に特徴づけられています。
一つは注意欠陥。これはいわゆる不注意や注意の散りやすさのことです。具体的な生活場面では例えば物忘れ、会話の最中に自分の順番を待てない、締切が守れない、話しかけられても気づかない、などが当てはまります。
もう一つは多動性と衝動性。これは活動が過剰であるとか、急な行動をしてしまう状態を示しています。例えば、しゃべりすぎる(多弁)、質問が終わる前に答えてしまう、許可を得る前に他人のものに手を出してしまう、手足が忙しなく動いている、教室で座っていられない、などの状態が当てはまります。
もちろんここに挙げたものは一例であって、実際はこういった特性の出方は多様であるためこの他にもADHDの特徴と思われるものはいくつもあります。

他にもいくつか条件がありますが(例えばこれらの症状が他の病気によらないものである、ばど)、主にこの二つの症状が社会的(学業上/仕事上)に悪影響を及ぼしているものがADHDの症状といえます。
しかしながら、ASDや被虐待児でも似たような症状を呈することもあり、特徴が出ていたとしても正確に見分けることは難しいです。


また、このような症状の奥には
実行機能の障害、遅延報酬の障害、時間処理の障害
の三つの障害があると考えられています。(あくまで現在考えられているモデルの一つで今後変化していく可能性があります。というか研究が進めば変化していくと思います。)

簡単に説明すると、
・実行機能の障害……目的達成のために適切な問題解決の方向を決定し、それを維持する能力、計画的に物事を進める力の障害
・遅延報酬の障害……報酬を待つことが苦手。将来もらえる大きな報酬よりも、すぐにもらえる小さい報酬を選んでしまう。
・時間処理の報酬……時間に対する注意の向かなさや段取りの悪さ
ということになります。
ただ、これも全てのADHDの人に当てはまる訳でもなくADHDの診断があったとしても、これらの障害に当てはまらない人もいます。それほどにADHDの病態像は多様です。


またADHDは遺伝によるリスクも高く、神経伝達物質(ノルアドレナリンやドーパミン)の異常という説も有力視されています。



以上、今回はADHDについていくつか説明しましたがまだまだ分かっていないことも多く、今後の研究によって定説が覆っていくのだと思います。

それでは、次回はADHDへの支援について説明します。

がね@心理系職員

前回、前々回と前書きを忘れていましたが、今回の連載は一般論を中心に置きつつ一心理士としての私見を交えつつ書いています。そのことを前提にお読みください。

【3.自閉スペクトラム症への支援】

今回は自閉スペクトラム症に対する支援について書いていきます。

支援に関しては本人の「生きにくさ」の軽減を目指して大きく二つ、本人に働きかける手段と、環境に働きかける手段がとられます。

本人に働きかける手段としてまずは投薬治療があります。
自閉症それ自体に効く薬というものはありませんが、易刺激性(かんしゃくの起こしやすさや攻撃性の高さ)に対して投薬されることはあります。中核的な症状に対してのものではないので根本の解決にはならないのですが、適応を目指す上で薬物療法も選択肢になります。
また、自閉スペクトラム症の人はその二次障害として抑うつ状態を示すことが多くあります。その症状に対する投薬もあります。

※二次障害…自閉スペクトラム症の人はその特性によって人間関係で孤立したり、仕事や学校でトラブルを起こしてしまうことがあります。そういった事が続くと「自分は独りだ」「自分は何もできない」という気持ちになって抑うつや不安が出てしまうことがあります。これも発達障害をめぐる大きな問題の一つです。

他にはSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)や認知行動療法を用いて、後天的に社会参加が可能になるようなスキルや感情のコントロールのスキルなどを身につけるという方策もあります。

※ソーシャル・スキル…社会生活の中で人と交流し、生活する技能。挨拶の方法や集団参加行動など。


次に環境に働きける手段ですが、自閉スペクトラム症と同じ診断名がついていたとしても、それぞれの症状の現れ方(先述した感覚過敏や感覚鈍麻など)は違いますし、そもそも別の人間ですのでそれぞれに合った環境を整えるということが重要なポイントです。

その一例として状況の視覚化を図る、という手段があります。自閉スペクトラム症の中には、先が見えない曖昧な状況を苦手とする人が一定数います。ですので今行っていること、終わったら次に行うことを絵や写真、もしくは実際に使っているものを見せて「今こういう状況だよ」と分かるようにしておくと、混乱が少なく作業に取り組みやすくなります。

他にも光が苦手、音が苦手、匂いが苦手と感覚に関する苦手さもつ人もいるので、その場合は刺激の少ないスペースを用意することもあります。


環境調整については一人ひとりの特性に合わせていく必要があり、自閉症スペクトラム症だから構造化すれば、視覚ヒントを入れれば、という訳ではありません。成長にも合わせてその都度最適な環境を周囲の人と探っていく必要があります。
しかし自分に合わない環境というものはいわゆる定型発達の人でも辛いものでもありますし、環境調整を行ったほうがいいということは発達障害の人も定型発達の人も変わらないものなのかもしれません。


では、次回は注意欠陥多動性障害について書きます。

がね@心理系職員

【2.自閉スペクトラム症とは?】

まずは発達障害のうち自閉スペクトラム症とはどういうものかみていきます。
自閉症は伝統的に以下の三つの特徴を示す障害とされてきました。

①社会的相互作用の障害(相手の反応を気にせず話す、人見知りをしない)
②コミュニケーションの障害(冗談が通じにくい、言葉のオウム返し)
③想像力とそれに基づく行動の障害(物の位置や順番へのこだわり)

このうち、知的な遅れのないものを高機能自閉症、言語に遅れがないものがアスペルガー障害と診断されてきました。

これが最新のDSM-5の改訂から
①社会的相互性とコミュニケーションの障害
②限定された反復される興味、行動や感覚過敏/鈍麻

の二つに大別されるようになり、さらに自閉症(高機能自閉症)、アスペルガー障害などいくつかに分けられていたのが、この改訂によりひとつのスペクトラム(連続体)にまとめられるようになりました。

同心円の広がりをイメージしてもらって、その中核に伝統的な自閉症があり、その外側に高機能自閉症やアスペルガー障害、またその外側にグレーゾーンといわれる人たち、そして一番外側に定型発達者(=健常者)がいると考えていただければわかりやすいでしょうか?そう考えると、定型発達との境界線上にいる人が最も多いことが分かります。(その境界もまた曖昧ですが)

また、診断基準の中でも感覚過敏や感覚鈍麻は最近加わったものであるため、もう少し詳しく説明します。
いわゆる五感が定型の人よりも偏っている状態です。例えば聴覚は特定の音(例えばモーターの駆動音や動物の鳴き声)が極端に苦手だったり、視覚は回転するものや光を見続けるという形で現れたりします。触覚でいうと、人に触られることを極端に怖がる一方で自分から触ることは平気、Tシャツは平気でもセーターのような服は苦手、という場合もあります。周囲の人からみると奇異な行動のように見えても、その人が不快な感覚から逃れようと頑張っているということが考えられます。
人によってこの感覚過敏/鈍麻の現れ方は違うので個別に対応を考えなければなりません。

では、次回は自閉スペクトラムへの支援について説明します。

がね@心理系職員

先日TwitterでVALUの投稿で見たい内容についてアンケートをとった結果、発達障害についてが多かったので、数回にわたって発達障害についてまとめていきます。

【1.発達障害とは?】
一口に発達障害といっても様々な障害を包括しており、それが指す言葉は実は領域や場面によって変わってきます。

例えば日本の法律上では、2005年の発達障害者支援法の定義がよく用いられます。
この法律では発達障害を
「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するもの」
としています。そして近年の改正で発達障害者は、
「発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるもの」
と定義づけられました。

※社会的障壁…発達障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のもの

次にアメリカ精神医学会が出しているDSM-5では神経発達障害という名称で、
知的障害、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、特異的学習障害、運動障害、コミュニケーション障害
などが分類されています。
(実はADHDは2013年のDSMの改訂までは診断上は発達障害ではなく、行動の障害に分類されていました。)

また、発達障害に分類されているそれぞれの障害も各領域で定義に違いがあり、発達障害をめぐる言説は入り組んでいるのですが、定義をおいておくと主に次の三つを指していることが多いと思います。

①自閉スペクトラム症(ASD)
②注意欠陥多動性障害(ADHD)
③学習障害
(人によってはここに知的障害が加わることもあります。)

では次回からはこれらの三つの発達障害について個別にみていきます。

がね@心理系職員

【5.情報の取り扱い】

以前の投稿でも触れましたが公認心理師には連携のための情報共有の義務と守秘義務という対立した二つの義務が課せられています。そのために秘密保持については正しく理解する必要があります。

まず、なぜ秘密を守らなければならないのかですが、守られなかった場合相談者は安心して自分のことを話すことができず、今後支援が必要な人も援助要請を諦めてしまうことになります。
そうならないように心理師は秘密を守るのですが、いくつかの条件の下では他者に秘密を話すことも認められています。前回までの投稿でもいくつかその条件について取り上げましたが、今回はチームで対応している場合について解説します。

例えば医療では一人の患者にたいして医師や看護師が、学校では一人の生徒に対して教師や保護者が関わっています。この中でどれだけ「秘密」を共有するのかということは非常にデリケートな問題です。医療であれば「主治医師条項」があります、学校でも監督者としての校長先生に報告する必要はあります。しかしながら面接の内容すべて話す必要はないですし、可能であれば面接の中で相談者に確認をとることもできます。ここで心理師は相談者との関係を崩さないように考えてどこまで情報を共有するのか判断する必要があります。

がね@心理系職員

【4.要心理支援者の安全】

心理師の業務の中で相手を傷つけてしまう可能性として「見捨てられ体験」があります。心理師のその業務の性質上相談者とは密着した関係になりがちなのですが、心理師の転勤や退職、病気などで不在とならざるを得ない場合、相談者は心理師から「見捨てられた」という感覚をもつことになります(頭で理解することとは別に)。
これは相談者の病態によっては悪化してしまうことになりますし、今後のカウンセリングの可能性を摘んでしまう結果にもなりかねません。

そのためあらかじめ不在となることがわかる場合は、当初に設定した目標がどの程度達成できているか、今後考えられる課題としてどのようなものがあるか、話し合いを行うことが必要です。そして他の心理師に引き継ぐか、そこで終結にするかも話し合って決めることになります。
急病などで急に不在となる場合は職場の同僚などが代わりに相談者に連絡することになりますが、そのためにはあらかじめ職場で不在時のマニュアルを作成しておくことが必要です。


また、明確な自傷や他害の可能性がある状況への対応については「タラソフ判決」導き出された保護義務というものがあります。

①犠牲者になり得る人に対してその危険について警告する
②犠牲者となり得る人に対して危険を知らせる可能性のある人たちに警告する。
③警察に知らせる
④他に、その状況下で合理的に必要とされる方法を、どのような方法であっても実行する。

例えば面接中に明らかな他害の意思を示し、そこに実行可能性があるようであれば心理師はその対象者に警告を行わなければならないことになります。しかしここにも守秘義務との対立が起こるので、本当に実行するのか、どこまでの危険性があるのかという状況に応じての判断が必要になります。
この保護義務は生命の危険という点で自殺にも適用されるため、場合によっては家族などに知らせ自殺の予防に努めることもあります。


では、次回は情報の取扱いについて書きます。

がね@心理系職員

【モチベーションの話】
昨日twitterでモチベーションの話をしたので、これを機にモチベーションの話についてまとめてみます。

モチベーション(動機づけ)は行動を一定の方向に向けて生起させる機能と説明されます。
動機づけには外発的動機づけと内発的動機づけという分け方があり、

外発的動機づけ=義務や賞賛など外部の環境によってもたらされる動機づけ
内発的動機付け=自分の好奇心などによってもたらされる動機づけ

とされています。

一般に外発的動機づけより内発的動機づけの方が効力は強く、持続しやすいと言われています。VALUの投稿にしても、他の人に見てもらうためという義務から投稿していると息切れしやすいように思えます。とはいえ常に内発的動機づけを保つことも難しいですし、この二つの動機づけは両立するものでもあるため上手に組み合わせられるといいですね。


また、1970年代にE.L.ディシという学者が

被験者にブロックパズル課題を行わせ、金銭的報酬、社会的報酬(賞賛)、無報酬の3つの条件間で内発的動機づけの高さが異なるか、パズル終了後の自由時間中に被験者がどれだけ長くパズルを行ったかで検討する

という実験をしました。

結果は、金銭的報酬によって動機づけは高まるという従来の考えとは反対に社会的報酬を受けていた被験者が高くなっていました。

この実験を受けてディシは内発的動機づけを高める要因として自己決定性とコンピテンス(自らの有能さを追求しようとする力動)を挙げました。つまり自らを高めるために、自分で意思決定をもって物事に取り組むとき、もっとも内発的動機づけは高まる、ということです。実験では金銭的報酬は自己決定性を阻害し、社会的報酬はコンピテンスを高めるように働いたのだと考えられます。

意思決定性についておそらく一番わかりやすい例は「勉強しなさい」と言われると勉強する気をなくすあれですね。


ちなみに僕の場合、こういったVALUの投稿は自分の学習を兼ねて行うことでモチベーションを保っています。